岡崎市のところてん製造販売の「味工房うめきん」は、100年企業を目指し、美味しい心太とともに環境貢献型商品として、消費者の皆さんに環境を守ることの大切さをPRします。
ぽかぽかと暖かい春の日差しを感じるようになると、「ところてん」の季節がやってきます。最近では若い世代の方がところてんを食べなくなり、特に子供たちにはなじみの薄い食品です。
「ところてん」とは、海藻である天草を煮て溶かし、型に流して冷やして固めた食品です。それをところ天突き器で細く麺状に突きだし、醤油や酢をかけて食べます。ところ天、心太とも言います。
一方、「寒天」とは、ところてんを戸外で凍らせて乾燥させたものを寒天と言います。似た者同士の兄弟のような食品ですが、その違いは意外と 知られていないようです。それでは「ところてん」と「寒天」についてご紹介します。
ところてんの原料となる天草は、海女さんたちが波の荒い海に潜り採取します。天草は、海岸付近で天日に干され洗浄を繰り返すことで、黄金色をした天草になります。これで長期保存できる天草になります。大き目の鍋に水を張り、天草を入れて沸騰させる。沸騰後は弱火にして1時間程度煮ると、天草はとろとろになります。抽出液を布で濾し、バットなどの容器に移し替えます。自然に放熱させておくと、約5時間程度で固まってきます。これをところてん突き器で突いて完成です。三杯酢で頂く「ところてん」は、日本の甘酸っぱい春の味と言えます。
関東より北や中国地方より西では、二杯酢あるいは三杯酢をかけた物に和辛子を添えていただきます。食事の時のお菜の様な食べ方だと聞いています。また関西では黒蜜をかけて食べたり、果物などと共に食します。東海地方では箸一本で食べる風習があり、主に三杯酢をかけた物にゴマを添えて食べるのが一般的とされています。
ところてんは、全体の98-99%が水分で、残りの成分のほとんどは多糖類(ガラクタン)です。ゲル状の物体ですが、ゼリーなどとは異なり独特の食感や磯の香りがあります。腸内で消化されないため栄養価はほとんどありませんが、食物繊維として整腸効果や血圧降下作用、コレステロールを低下させる作用があるようです。また、血糖値の上昇を緩やかにしたり、肥満を防ぎ便秘の解消にも役立つとわれています。
ところてんの歴史は古く、天草を煮溶かす製法は遣唐使が持ち帰ったといわれています。海草を煮たスープを放置したところ偶然にできた産物と考えられ、かなりの歴史があるようです。当時は、天草を「凝海藻(こるもは)」と呼んでおり、ところてんは俗に「こころふと」と呼ばれ、漢字で「心太」があてられたといいます。「こころふと」の「こころ」は「凝る」が転じたもので、「ふと」は「太い海藻」を意味していると考えられますが、正確な由来は未詳だそうです。
室町時代には、「心太」は湯桶読みで「こころてい」と呼ばれるようになり、更に「こころてん」となり、やがて江戸時代の書物では「ところてん」と記されているそうです。江戸時代には庶民の間食として好まれ、砂糖もしくは醤油をかけて食べられたようです。
(参照:語源由来辞典http://gogen-allguide.com/to/tokoroten.html)
寒天(かんてん)は、ところてんを凍結・乾燥したものです。だから「ところてん」の副製品と言えますね。江戸時代初期、山城国紀伊郡伏見町(現京都府)の美濃太郎左衛門が「ところてん」の凍結乾燥した乾物で「ところてん」を作ると、海藻臭くないものができたころから始まりました。名前は、寒晒心太(かんざらしところてん)の意味を込めて、「寒天」と命名したそうです。 その後製法が改良され1800年代には、信州の諏訪地方では農家の副業として寒天づくりを始め、角寒天が定着し気候風土を活用した地場産業になりました。
天草を釜で煮ます | 煮溶け汁を舟に流す |
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寒天用心太を突きます | 寒天が乾燥します |
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カチカチに凍ります | 乾燥し寒天になります |
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出来た寒天を纏めます | 野上げした寒天です |
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※天草・寒天の写真は、天草と糸寒天の専門店「株式会社 森田商店」さんからの提供です。
寒天は、日本のオリジナルな商品であることが分かりました。寒天は、製法が編み出され和菓子の原料として改良され発展してきました。1881年(明治14年)には、寒天培地による細菌培養法が開発され、寒天の国際需要が増えてきます。第二次大戦前、寒天は日本の重要な輸出品でした。しかし戦時中は、日本由一の製品として輸出禁止措置をとりました。そこで、困った諸外国は自力による寒天製造を試み、工業的な寒天製造法を開発しました。これが粉末寒天です。諸外国ではモロッコ、ポルトガル、スペイン、チリやアルゼンチンで寒天を製造しています。今や寒天は、伝統的な和菓子の利用から、細菌培地、組織培養、医薬品、バイオテクノロジー向けの製品など最先端の分野で活躍しています。
寒天は、天草から得られる天然多糖類が乾燥した物で、加熱すると溶解し、38℃以下に冷ますことによって凝固してゲル化します。このゲルはもう一度熱を加えることで液体に戻る性質を持っています。この性質を熱可逆性といい、寒天の特徴の一つです。寒天はゼラチンよりも低い、1パーセント以下の濃度でもゲル化が起こります。一度固まった寒天ゲルは85℃以上にならないと溶けないため、温度変化に強く口の中でとろけることがありません。食用のゲル(ゼリー)の材料という点では、牛や豚から作られるゼラチンに似ていますが、化学的には異なる物質です。
こうしてみると「ところてん」と「寒天」は、同じ原料である紅藻類の海藻(天草)からできており、豊富な食物繊維を有する健康に良い食品と言えます。「ところてん」は、奈良時代には存在が確認され、江戸時代には庶民の食べ物となりました。この「ところてん」をもっと手軽に食べるために考えられたのが、「寒天」といえるでしょう。「寒天」には、これまで角寒天や糸寒天がありましたが、いまでは粉末寒天や固形寒天、フレーク寒天など使いやすい製品に変わってきています。
一般的に「ところてん」は、細長く突き出された食品の名前となっていますが、正確には天草の抽出物を固めたものを「ところてん」と言います。「寒天」は、「ところてん」を干した加工品と言えます。